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zoom RSS 星を見ると心が温かくなります。そのわけは・・・

<<   作成日時 : 2009/09/11 21:10   >>

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童話『 そっと星を抱きしめて 』



1.月食

ひろし君は小学二年生です。
今、おふろにはいっています。
おふろといっても、家のおふろとはちがいます。山の中にあって、まわりはごつごつした岩にかこまれています。
暗い夜空には、きらきらと光る星や、ゆりかごのような形の月が見えています。

そう、露天ぶろにはいっているのです。
となりにつかっている父さんは、気もちよさそうに目をつぶっています。
毎日、いそがしかったので、本当にひさしぶりの旅行なのです。

「あれ、へんだぞ」
空を見あげていたひろし君は、おかしなことに気がつきました。
「ねえ、月がさっきより細くなってるみたい」
「ふえーと、今日は十月一五日。そういえば、ニュースで月食があるっていってたな。よく見ておくんだよ。あんまり見られるものではないから」
父さんが、ねぼけた声でいいました。

「月食って?」
「それはね、月が、地球のかげにかくれてしまうことなんだ」
なんだか、とても大きな話です。
「ふーん」
ひろし君は、じっと月を見まもりました。

そのうちに月は、おわんのふちのように細くなり、しまいに見えなくなってしまいました。
「どこにいっちゃったのかな」
首をまわして、あちこちさがしました。
「あれっ、あそこ、光ってる」
林とのさかいめ、大きな岩のうしろからだれかが出てきました。
金色の服を着た女の人です。歩くたびに 服がすけていっています。

チャプリ・・
かすかな音をたてて、おふろにはいってきました。

『服、なくなっちゃったよ。でも、からだが光っている。もしかしたら、あの人は、月が変身したものなのかも』
ひろし君は、となりの父さんにささやきました。
「ねえ、とてもきれいな女の人が来たよ。それでね、からだが光ってるんだ」
「こらこら、ほかの人のことを、あれこれ いってはだめだよ」
「あの人、きっと お月さまなんだよ」
「これこれ、しー」
父さんは、ちらりとも見ようとせず、さぶりと顔におゆをかけました。

少しして、もう、あたたまったのでしょう。女の人はおふろを出ました。
「お月さま」
ひろし君は、そうっとよんでみました。
女の人は、ふりかえってにっこりしました。

『やっぱり、お月さまなんだ。なんて やさしそうなんだろう』
お月さまは、もときたほうに歩いていきます。からだには金色の服が見えはじめています。そのさきには・・
ああ、二ひきのウサギが立っています。やはり、金色の服を着ています。 

『ちょっといってくるね』
ひろし君は、目をつぶったままの父さんをおいて、こっそりとおふろを出ました。
はだかなんて気にせずに、林のほうにいきましたが、
「ややー、なにこれ」
いつのまにか、ひろし君もお月さまたちと同じ、からだにぴったりの金色の服を着ていました。



2.月の宇宙船

大きな岩をまわると、玉がありました。
運動会でころがす大玉より、もっと大きくて、まぶしいくらいに光っています。息をしているみたいに、ふくらんだりちぢんだりしています。
その前に、お月さまとウサギたちが立っていました。

「名まえをよんでくれてありがとう。えーと、あなたのお名まえは」
「ぼく、ひろしっていいます」
「ひろし君ね。よかったら、宇宙船の中をのぞいてみませんか」

『宇宙船・・ということは、この玉が、ぼくらが見ている月で、お月さまはこれにのっているんだ』
ひろし君ははっと思いつきました。

お月さまが宇宙船にさわると、トンネルのような穴がぽっかりとひらきました。
「さあ、どうぞ」
「でも・・」
ひろし君はまよいました。しらない人の乗り物にはのってはいけないのです。
「なにも、心配ないですよ」
ウサギたちが、声をそろえていいました。

クスッ
ひろし君は、思わずふきだしてしまいました。
ウサギたちのまじめな顔が、あまりにもかわいらしくて、おかしかったのです。
だいたい、話をするウサギをかっている悪い人なんているでしょうか。
それに、これは、みんながしっている“月”の宇宙船なのです。

「じゃあ、お言葉にあまえて」
ひろし君は にっこりとうなずきました。

「すごいや、これが、宇宙船なんだ!」
中に入ったひろし君は、目を丸くしました。
かべじゅうに、砂時計のつつのようなものがついています。天井ちかくには、いろんな大きさの光る石が、ふわふわとうかんでいます。
大きな窓の前には、りっぱないすがあって、床からは∪字の形のアメ色のぼうが にょきりとつきだしています。

「あそこが操縦席でと・・。じゃあ、これは?」
目の前に、白いかたまりのはいった銀色のウスのようなものがありました。二本のキネがたてかけてあります。
「こんなところで、おモチをつくの」
ひろし君がきくと、ウサギたちがわらいながらこたえました。
「もちろんです。
 だけど、食べるおモチではありません。宇宙でいちばん速い お月さま号のエンジンの燃料をつくのです」

と、とつぜん、
「ピピピピ。宇宙かんしセンターから、お月さまへ、きんきゅうれんらく。
 天の川ダムがたいへんです。すぐに、ダムにむかってください!」
かべのどこからか、びりびりとふるえる声がとびだしました。
「りょうかい!」
きりっとへんじをしたお月さまがふりかえりました。
「わたしたちは、これから天の川ダムにいかなくてはなりません。できるのなら、いっしょに来て、手伝ってもらいたいのだけど・・」
その顔は、とてもしんけんでした。
ここで、ことわるわけにはいきません。なんといっても、お月さまのたのみごとです。父さんだって、賛成してくれるにきまっています。
「もちろん!」
ひろし君はこたえました。
「ありがとう」
お月さまは、ひろし君の頭をそっとなで、窓の前にある操縦席にすわりました。



3.宇宙へ、出発!

「それでは出発します。エンジン、始動!」
「アイアイサー」

テッテンチコ テッテンチコ
ウサギたちが、キネをかついで、燃料をつきはじめました。

「ひろし君は、燃料をこねてください。そうすると、宇宙船のスピードが、ずっと速くなるのです」
お月さまが、前をむいたままいいました。

ひろし君はびっくりしましたが、すぐに
「りょうかいしました!」と元気よくへんじをしました。
おもちつきなら、幼稚園にかよっていた時にしたことがあります。
先生から、「おもちをこねるの、とても上手ね」とほめられたことだってあります。
さっそく、白いかたまりに手をのばしました。
「うわっ、ちち・・」
おもち燃料は、ほくほくととても熱かったのですが、がまんしてこねました。

テッテンチコ  ペタ 
テッテンチコ  ペタ

ウスの底にあいた小さな穴に、燃料が少しずつはいっていきました。

シュー サササー
さざ波のような音をたて、宇宙船は空に飛びあがりました。

窓から、ちらりとおふろが見えましたが、父さんは、あいかわらず目をつぶっていました。おまけに、大きく口をあけて・・・

テッテンチコ  ペタ
テッテンチコ  ペタ

宇宙船は、ものすごいスピードで飛んでいきます。いろんな色の星たちが見えたと思ったら、すぐに、うしろに流れていきました。

五分もたったころでしょうか、窓の外に、光るものが近づいてきました。
白いクジラです。
宇宙船よりも、ずっと大きくて、背中からは、きらきら光る氷のかけらをふきあげています。

「お月さま、そんなに急いで、どこにおいでですか」
大きな口を、ぴったりと窓につけて話しました。
「ほうき星のクジラさん。これから天の川ダムにいくの。ダムがたいへんらしいの」
「そんなら、わしも、手つだいにいきましょう。ほかのすいせいクジラたちにも、いっしょにくるように伝えましょうか?」
クジラがきくと、お月さまは、やさしく首をふりました。
「いいえ、あなたは、きまった道を泳いでいって。宇宙の子どもたちは、みな、あなたたちがやってくるのを、楽しみにまっているのだから」
クジラはこっくりとうなずき、ヒレでかるく窓をなで、もときたほうに泳いでいきました。
大きなからだのうしろからは、ふきあげたかけらが、光のジュータンのようにのびていました。 

「みんな、お月さまのことを大切に思っているんだ」
ひろし君は、遠くにはなれていくクジラを見ながら感心しました。
「よそみをしていては、だめですよ」
ウサギたちがいいました。
「ごめんごめん」
ひろし君は、ぺちんとほっぺをたたいて、また、おモチ燃料に手をのばしました。

テッテンチコ  ペタ
テッテンチコ  ペタ

宇宙船は、ぐんぐん飛んでいきます。
でも ひろし君は、もう、手がくたくた。キネにつかれないように、ひらひらと動かしているだけです。

その時、お月さまがいいました。
「さあ、天の川ダムに、とうちゃくよ」



4.宇宙のダム

ひろし君たちは、外に出ました。
「うはー、すごい」

そこは、頭がクラクラしてしまうほどに巨大なダムの上でした。
すりガラスみたいに半分すけていて、おとぎ話に出てくるお城のへいのように見えなくもありません。
ただし、右と左にずいずいーとのびていて、ずっとむこうは、星の海にかすんでしまっています。歩いていったら、どのくらいかかることでしょう。一生かかっても、はしにはつきそうにありません。

下をのぞくと、うすい雲のような川が流れ出ていました。虹色をした魚たちが泳いでいます。
「これが天の川。こんなに近くで見られるなんて。でも、なんだかへん。水が少なくて、魚たちがくるしそう」

反対側を見てみると、たいへんです。
もくもくとたれこめる霧のような水が、あふれるくらいにたまっています。それに、どこからか、ギリギリッとへんな音がきこえてきます。

「もう少しで、ダムがこわれてしまう。そうしたら、宇宙が星の砂つぶでできた水におおわれてしまう」
お月さまがいいました。

その時、
「お月さま、あれをごらんください!」
ウサギたちが、うれしそうにとびはねました。
見上げれば、紺色の空のかなたから、数え切れないほどのロケットが飛んでくるところでした。アイスクリームのコーンのような形をしています。

次々とダムにおりてきたロケットからは、星形のバッジをつけたペンギンたちが、ぞろぞろと出てきました。
「お月さま。宇宙ぼうえいペンギン隊、ただいま、とうちゃくしました!」
そういうと、ペンギンたちは、あふれそうな水の中に飛びこんでいきました。

「心づよい仲間がきてくれたわ。わたしたちもいきましょう」
お月さまも、ウサギたちと水の中に飛びこみました。
ひろし君は、あまり泳げないのでこわくなりました。でも、お月さまやウサギたちだっていったのです。
「せーの」
勇気をだして、飛びこみました。



5.悲しみのかたまり

星の砂つぶでできたダムの水は温かでした。それに息ができるのです。
「これなら、だいじょうぶ」
ひろし君は、ぐんぐんと暗い水の底にもぐっていきました。

下にいくほどに、水は冷たくなっていきます。そしていきついた先、ダムの底には、青白く光る小さなかたまりが、山のようにたまっていました。

「あのかたまりはなんなの」
ひろし君がきくと、お月さまはしずかにいいました。
「あれは、この宇宙に住んでいる人たちの、悲しみのかたまりなの。心の底にかためてしまった悲しい気もちは、いつのまにか、宇宙の中心にあるこのダムにやってくるの。でもね、やがては、星の砂つぶにまじって流れ、夜の空をかざるのよ。
星を見ていると、気もちがスウーッとしたり、胸が温かくなるでしょう。
それは、わすれてしまっていた悲しみの気もちが、輝く星に生まれかわったのを見られるからなの。
それにしても、こんなにたまってしまうなんて・・・」

みんなは、青白いかたまりを、どんどんダムの上に運んでいきました。
それはとてもかたく、氷のように冷たいものでした。

ひろし君が、奧にあったかたまりの山に、手をのばそうとした時のことです。
一つのかたまりが、じぶんから、すぅーと手の中にはいってきました。
「なんなのこれ・・」
つぶやくのと同時に、心の中に二年前になくなった母さんの顔がうかびました。

おこってばかりだったけど、いつもいっしょにいてくれた母さん・・・
さびしい時に、そっとだきしめてくれた母さん・・・

「これ・・ぼくの悲しみの気もちなんだ。ぼくにわすれられてしまっていて、こんなところにやってきていた」
となりによってきたお月さまが、やさしくうなずきました。
「でも、会えたのね。ずっとまっていた人の手につつまれて、よろこんでいるみたい」
耳に近づけると、鈴をふるような音が、小さくきこえました。

「さあ、もうだいじょうぶ。水が流れはじめたわ。上にいきましょう」



6.輝く星

ダムの上は、悲しみのかたまりだらけでした。
「これどうするの」
手にもっていたかたまりを、そっとおいてから、ひろし君はききました。
「よく見てて。とてもすてきなことよ」
にっこりとわらったお月さまは、うでを大きく広げていいはなちました。

「ダムの底にわすれられし 悲しみの気もちよ。
 流れいで
 宇宙ををてらす光となれ!」

言葉がおわったとたん、かたまりは、次から次へ 流れ星のように飛んでいきました。
ずっと先のほうで、白く光りはじめています。

最後のかたまりが飛んでいった時、ひろし君の胸が、痛いほどに熱くなりました。
それは、ひろし君の悲しみの気もちでした。

目の奧でこおっていたものがとけだしたように、涙がぽたぽたとこぼれました。

その、かたまりの飛んでいった先には、
キラッ、キラリ
語りかけるようにまたたく星が生まれました。

ひろし君の胸の熱さは、だんだんなくなり、ほんのりと温かくなってきました。
お月さまは、うなずきながら、やさしく手をにぎってくれていました。

ダムの上のかたまりは、あっという間になくなってしまいました。
「お月さま、またお会いしましょう」
ずらりと一列にならんだペンギンたちは、びしっと敬礼をして、ロケットにのって飛んでいきました。

「それでは、わたしたちも」
お月さまが、ひろし君のおでこにキスをしながらいいました。
「手つだってくれて、本当にありがとう。帰りはべつの道をいかなくてはなりません。
 さあ、天の川にからだをひたして。川は、時の流れをこえ、やさしくをあなたを運んでくれるわ」

ひろし君はさびしくなりました。でも、泣いたりはしませんでした。
「宇宙船に乗せてくれて、ありがとう」 
しっかりとお礼をいってから、天の川に飛びこみました。

スススー サササー
まわりに魚たちが集まってきました。虹色のうろこをきらめかせながら、おどっています。
「よかったね、みんな」
ひろし君は、そっとほほえみました。

星の砂つぶでできた川は、お日さまに当たった わたぶとんのように からだをつつんでくれています。
時々、ちらちらとまじっている青白いかたまりが、なでるようにさわっては遠ざかっていきました。
氷のような冷たさは、もうありません。
きっと、だれかの瞳の中で、やさしく輝こうとしているにちがいありません。

「ふぁー ゆったり ゆったり・・」
ひろし君は なんだか ねむたくなってきました。


「ひろしや・・」
どこかで、きいたような声がしました。

「これこれ、ねむってはだめだよ」 
はっと目をあけると、もとのおふろにもどってきていました。
空には、細いからだをあらわした月がうかんでいます。

「ひろし、月がきえるとこ、見てたか。
 ふっほー、月が出てきたのに、星がふえたみたいに見える。
 おや、あの星・・・」
子どもみたいに はしゃいだ父さんでしたが、急にだまって空の一点を見つめました。

ひろし君は、とてもうれしくなりました。
じっと見つめる目にうつっているのは、父さんの気もちがつまった大切な星にちがいありません。
「あのね、父さん・・」
ひろし君は、星のことやお月さまの宇宙船にのったことを話してあげようとしました。

ですが、
・・ひろし君、それはないしょのこと・・
どこか、空のかなたから、かすかな声がきこえました。
あわい月の光の中に、やさしいお月さまの顔が見えたような気がしました。


「父さん、きっと、またここに来ようね」
ひろし君は、元気な声でいいました。
「もちろんだとも」
父さんは、顔をくしゃくしゃにしてわらいました。

                                                                
 おわり



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