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zoom RSS 愛を求めたドロボウと少女の物語

<<   作成日時 : 2009/09/13 04:45   >>

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童話 『 唐草三五郎 〜ワタシの愛したドロボウさん 』


↑こちらもどうぞ(初音ミクちゃんに朗読してもらいました)

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【壱の章】

唐草三五郎は、どろぼうです。ちょっと かわったどろぼうです。
三五郎の盗むものは、決まっています。
お金や宝石というものではなく、その人だけの宝物。
いつもあるので、宝物であることを忘れてしまっている大切なもの。

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三五郎の名まえが あまり知られていないころ、人々はのんきにいっていました。
「おかしな どろぼうが いるものだね」
「大切なものがわかるのなら、一度、盗んでもらいたいものだわ」などと。


世界一の大金持ち、リッチェストさんも、そんなのんきな人のひとりでした。
リッチェストさんは、ほほをタフタフふるわせながらいいました。
「いつもあるから、忘れているものとな。そりゃ やっぱりお金かの。たくさんありすぎて、どこの銀行に、どれだけあるかも よく知らない」

そんなリッチェストさん、ある朝、服を着ました。
いつものように上着のポケットに手を入れ、時計のゼンマイをぐりぐりとまわす・・はずでした。
でも 時計はなく、かわりにあったのは、唐草模様の小さなカード。
黒い墨で、文字が書いてありました。

・・貴方のお宝、ちょうだいしました
〜唐草 三五郎

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リッチェストさんは、曾爺様(ひいじいさま)からもらった懐中時計を盗まれてしまったのです。

心に、ぽっかりと穴があきました。冷たい風が ピューと吹きこみます。
仕事なんか 手につきません。
すてきなご馳走を食べても、ぜんぜんおいしくありません。
子どものころから、いつもポケットにあった懐中時計・・・
あるのがあたりまえ。大切ということを、すっかり忘れていました。

リッチェストさんは 同じ形の時計を、世界中から買い集めました。
でも、これまでについた汚れや傷はなく、チッチと刻まれる音もちがうものばかりでした。

それではと、何千人もの時計職人に、まったく同じものを作ってもらいました。写真を見せたり、音まで確認したので、出来上がりは まったく同じです。

でも、やっぱりちがいました。

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あの時計だけがもっていた曾爺様の温もりは、どこにもなかったのです。

もちろん、盗まれた時計を放っておいたわけではありません。
お金に糸目をつけず、世界中の探偵はいうまでもなく、仕事をしていない普通の人や、どろぼうさえもやとって、探してもらいました。
でも、いつまでたっても、よい知らせは届きませんでした。

山のようにあったお金は、あれよあれよというまに減っていき、やがて、すべてなくなってしまいました。
リッチェストさんに残ったのは、お屋しきよこに広がる、牧場のはしにある小さな家だけとなりました。




この事件から、唐草三五郎の名まえは、世界中に知れわたりました。

「忘れてしまっている宝物。いったい、どうすりゃ 守れるんだ」
「気づいた時には遅すぎる。大切なものはもどらない」

だれもが、三五郎を怖れるようになりました。





【弐の章】

さて、日本の とある小さな島に、モエちゃんという女の子がいました。

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マシュマロパイが大好きなモエちゃんは、ある重大な秘密を知っていました。
それは、みなしごの赤ん坊だったモエちゃんを引き取ってくれたという、優しい父さんの、もうひとつの名まえ。

父さんの部屋を探検している時に知ったのです。

机の下にもぐりこんだ時に、ふと 上を見れば、おかしな箱がかくされていました。
あけてみると、ゾロゾロリ・・・
ニュースでおなじみ、唐草模様の小さなカードが、たくさん出てきたのです。

父さんの名まえは、いとうひろし。
でも、もうひとつの名まえは・・
. ・・唐草三五郎・・


モエちゃんには、どうしても知りたいことがありました。
ある日、島の岸辺にある郵便受けに、手紙を入れました。

・・からくさ さんごろうさんへ
「あなたは、じぶんからは なにをぬすむの?」
〜ちいさなおんなのこより


次の日から、父さんは部屋にとじこもりました。

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「うーむ、わからない」
うなり声が、ドアのむこうから聞こえてきます。
モエちゃんは心配になりました。
「お父さんは、大切なものがわからないんだ。このままでは、病気になってしまう」

そこで、手紙をもういちまい、そっと、ドアの下からすべりこませました。

・・からくさ さんごろうさん へ
「もういいです。じぶんのたからものをぬすむなんて かんがえないでください」
〜もういちどの ちいさなおんなのこより

でも、うなり声は消えません。どんどん、声が弱まってきているようです。

「わたし、なんてことしてしまったの。まさか、こんなことになるなんて」

モエちゃんは決めました。
「わたしも探すのを手伝ってあげる。きっと、あそこにあるにちがいないわ。一度だけ、連れていってもらったことのある 山の中の秘密の洞窟に」

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ロウソクに火をともすと、ガラスケースに入った様々なものが、宝石のように光って見えました。


「ここはなんの部屋?まるで、博物館みたい」
モエちゃんが聞くと、父さんはこたえてくれました。

「ここは、ぼくの宝物置き場。
むかし事故で、家族がいなくなって、心が空っぽになってしまったことがあった。そんな時、ふと 母さんの叱り声を思い出したんだ。

【悪い事をしたら、宝物は、洞窟に飛んでいってしまいますよ】ってね。

ぼくは、ずっといたずら好きだった。だから、ここには宝物があるのでは!
そう思ってきたけれど、何もなかった。それで、あれこれ考えてね。ふっふ、いろいろ持ってくるようになったのさ。
おかげで、うまくいっているみたいだ。空っぽだった心に、だんだん、何かが入りはじめたんだ」


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「あのガラスケースに入っていたのは、きっと、よその人の宝物。悪い事をしたおかげで、あそこには、お父さんの宝物になったものがあるのだわ」





【参の章】

モエちゃんは、カメラと懐中電灯を持って家を出ました。
カメラを持ってきたのは、洞窟の中にあるものを写真にとって、父さんに見せてあげようとしたからです。

島をぐるりとまわって、山を登りました。茂みをかきわけ かきわけて、ぽっかりと黒い口を開いた洞窟にたどりつきました。

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「光をのばして、どうか わたしを連れてって。お父さんの宝物のところへ」
持ってきた懐中電灯に、しっかりお願いしてから 中に入りました。

岩に囲まれた道は、ノッペリゴツゴツ、広くなったり狭くなったり・・ずっと奥まで続いていました。道が分かれているところでは、広い方に進みました。

てくてく とぼとぼ・・いったい、どれだけ歩いたことでしょう。

だけど、いくら歩いても秘密の部屋には、たどりつきませんでした。
やがて、懐中電灯は電池が切れて、あたりは真っ暗になりました。自分の手さえも、どこにあるのかわかりません。
モエちゃんは、洞窟の中で迷い、進むことも、もどることもできなくなってしまったのです。

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「わたし、お父さんの宝物探し、手伝うことができなかった」
しーんと静まりかえった暗闇に、ポツン、涙が落ちる音がひびきました。

その時です。
ピカリとまぶしい光がさしこみました。

「唐草三五郎、参上!
やっぱり ここに飛んできた わしの大切なお宝。そうれ ぬすむぞ」

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聞いたことのある低い声がしたと思ったら、ふわりと高く、抱きあげられていました。

気がついたら、家の中のベッドの上。隣で、父さんがいびきをかいて寝ていました。
時々、楽しそうに、寝言をいっています。
「ムニャムニャ、ぼくのお宝、盗んだのはだーれ。
                             
はいはい、それはわしです。ごめんなさい。ムニャムニャ」




少したって、世界中から、驚きと喜びの声が、聞こえはじめました。
盗まれていたものが、次々ともどりはじめたのです。

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あのリッチェストさんは、もどってきた時計に 何度もほほをこすりつけながら 大切に首にかけました。小さな家での貧しい生活となってしまいましたが、その顔は、前よりも幸せそうでした。

いつのまにか、唐草三五郎は、いなくなっていました。
自分で 自分の宝物を盗んだのが、運のつき。どろぼうではなくなってしまったのです。

もしかしたら、もう、心は空っぽではないことに気がついて、どろぼうをする必要がなくなってしまったのかもしれません。



そして、モエちゃんは・・

ある朝、目が覚めたら、部屋の様子が、がらりと変わっていました。

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自分が横になっていたのは、こびとがねるような小さなベッド。
窓には、ピンク色のかわいいカーテンがひかれ、壁には、どこかで見たことがあるような 赤ん坊の写真がかけられています。これまでの大きなベッド、古びたうす暗い部屋とは大ちがいです。

いつも聞こえていた波の音もきこえません。代わりに聞こえるのは、ブンブンと走る車の音。まるで、にぎやかな町の中のようです。

「いったいここは?」

柔らかい毛布から起きだしたところに、ドアを開けて、女の人が入ってきました。
モエちゃんを見て、目玉を白黒、顔を青くしたり、赤くしたりしています。しまいに、大泣きして叫びました。

「あなた、あの子が、帰ってきたわ!」

ああ なんてこと。
モエちゃんも、盗まれた宝物の一つだったのです。
お母さんと、本当のお父さんは、仕事に夢中になって、赤ん坊だったモエちゃんを、おばあちゃんの家に、あずけっぱなしにしていたのです。安心しきって、大切ということを、すっかり忘れていたのです。
そこに、唐草三五郎がやってきたのでした。


「お父さん、お父さん、三五郎さん・・」
お母さんと、本当のお父さんに抱きしめられながら、モエちゃんはずっと泣き続けました。


・・ありがとう。僕の宝物

  君と過ごした時間が わしのすてきな宝物
  胸の奥の 宝物置き場は あたたかさで満ちている

〜唐草 三五郎

床におちていた唐草模様の小さなカード、にじんだ墨で、文字が書いてありました。

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【結の章】

時というものは、だれにもとめられることなく流れていきます。
月が地球をまわり、地球が太陽をまわるたびに、一つの思い出は 色をうすめ、新しく あざやかな思い出が 生まれていきます。

中には、しっかりと心に刻まれている 思い出もあるかもしれません。

それが すてきなものならば、きれいな額に入れ、飾ってあげるのもいいかもしれません。
バスケットに入れて、ピクニックに連れていってあげるのもいいかもしれません。
もちろん、そっと胸にしまっておくのが、一番かもしれませんが・・

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さてさて ここは、とある日本の 小さな島。
最近、不思議なお店ができて、評判を呼んでいます。だれがやっているのかはわかりませんが、きちんと電話帳にのっています。

【心のお宝、発掘屋】
あなたの大切な宝物、忘れてしまったら、こちらへどうぞ。きっと探してさしあげます。
電話番号は 41#-3560-552#


ある日、一人の若い新聞記者が、このお店の取材にやってきました。とてもきれいな女の人です。

「連絡をしていた者ですが、ご主人はおられますか」
 ドアをノックして 声をかけました。
「はいはい、わしが、ここの主人です」

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出てきたのは、髪に白いものが混じった優しそうな男の人。
あまり若くはありませんが、スポーツ選手のように、身体はがっちりすらりと伸びていて、とても元気そう。こそっと、人の家に忍び込むことだってできそうです。

「お話を聞かせてくださいな」
「えーはい、どうぞ。さて、何からお話ししましょうか」

二人がついたテーブルの上、藤で編まれたカゴの中には、女の人が大好きだったマシュマロパイが、山ほどに積まれていました。                  

                                                                                                                   おわり





































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